CATEGORY / 未分類

遺産分割事件の受任

 

遺産分割事件の相談に来られる方は、グループで来所するのを希望することが多いように思います。

しかし、弁護士としては、委任を受けるのは原則として相続人1人とし、利益相反が顕在化しないと思える場合以外は、2人以上の相続人からの依頼は受けないようにするというのが基本だと思います。仮に受任する場合でも、依頼者同士の利害が対立したときは、すべての代理人を辞任することを明記した委任契約書を作成して受任する必要があるでしょう。

遺産分割は、限られたパイを複数の相続人が奪い合う、いわゆるゼロサムの世界です。相手が多くとればこちらがへこみ、こちらがとれば相手がへこみます。感情的対立も激しくなることが多く、合理的な提案であっても「相手の提案だから受け入れない。」となって任意の遺産分割協議が成立せず、やむなく遺産分割調停・審判と手続をせざるをえないことが多々あります。

遺産分割の当事者は、依頼のとき意見が一致していても、利益相反の潜在的な可能性があると言われます。複数当事者から依頼を受け、依頼者同士が仲間割れして意見が対立した場合、代理人は動きが取れなくなってしまいます。依頼者Aの主張を優先すれば、依頼者Bはその利益や希望が無視されます。そのとき、依頼者Bが、弁護士に対し、依頼した弁護士が自分の正当な利益を擁護していないと思うのは当然です。

弁護士としては、依頼者の数が多い方が取得する遺産額も多くなり、着手金や報酬金がたくさんもらえるため受任の誘惑にかられます。しかし、そうやって複数相続人の依頼を受けたのに、途中で依頼者同士が対立した場合に一方依頼者の方だけ辞任すると、弁護士職務基本規程27条1号に違反することになります。このようなケースで、弁護士会から懲戒処分を受けるケースも散見されます。

依頼者間の利益が相反する可能性がある場合は、受任にあたって十分な注意と説明が必要です。

預貯金債権を遺産分割対象とした最高裁平成28年12月19日決定の衝撃

 

最高裁大法廷は、これまでの預貯金債権は遺産分割の対象とならず、相続と同時に各相続人に当然に分割されて帰属するとの判例を変更して、預貯金債権も遺産分割の対象になるとの決定をしました。

これにより、遺産分割未了の間、各共同相続人からの法定相続分に対応する預貯金の払戻請求を銀行等金融機関は拒絶することになります。このことは、被相続人が多額の預貯金を遺して遺言なくして死亡した場合、相続人全員が同意しないと、その預貯金の払い戻しができないことを意味します。すなわち、共同相続人間に争いがある場合、10か月の申告納税期間内に、相続税の納税が完了せず、相続税を支払うための遺産が目の前に十分にあるのに、高額な延滞金が課せられるという事態が起こることになります。

木澤裁判官らの補足意見は、このような不合理を想定してか、家事事件手続法200条2項により仮分割の仮処分の申立をして、相続財産中の特定の預貯金債権を特定の共同相続人に仮に取得させる手続を活用することができるとしています。もっとも、仮分割の仮処分申立には、遺産分割調停の申立がなされていることが要件となりますので、今後は早めの調停申立を意識する必要があるということになります。

このような事態を回避するには、事前に遺言をして金融資産の取得者を決めておくことが有効です。特に公正証書遺言があれば、比較的容易に、金融機関から預金の払い戻しを受けることができる(拒絶する先に対しては訴訟で払戻を受けることができる)と思います。

ごあいさつ

 

当事務所公式ウェブサイトをご覧頂きましてありがとうございます。

これは、事務所に初めておいでになる方が非公式サイトを見て道に迷ってしまうケースが何回かあったこと、司法修習生の皆さんから「事務所のホームページはないのですか?」との質問をしばしば受けるようになったこと、改正個人情報保護法の施行が目前に迫り、個人情報保護方針を公開すべき状況となったことなどから、当事務所でも公式ウェブサイトを開設し、関係者の皆様の便宜を図ろうと考えるに至ったことによるものです。

このコラム欄では、私共が日頃考えていることなどを発信してゆこうと思っております。
今後ともよろしくお願いいたします。


  Previous Page

- PAGE 4 OF 4 -

loading
×