プロボクシング全日本新人王決定戦は、各階級をトーナメント戦で勝ち上がった東軍代表(東日本新人王)と西軍代表の対戦です。この全日本新人王決定戦で勝つと、日本ランキング(=日本チャンピオンに挑戦する資格)が与えられます。このため、出場選手たちのモチベーションがとても高く、各階級で手に汗握る熱戦が繰り広げられることから、例年とても人気があります。
2020年度は、コロナ禍のため、年末に行われる予定だったのが遅れ、年明けの2021年2月21日に東京のボクシングの聖地、後楽園ホールにおいて無観客で行われました。
今回の注目カードは、スーパーフライ級の久保春平選手(宮田ジム=東軍)対杉本太一選手(勝輝ジム=西軍)。久保選手は、東日本新人王決定戦で、第2ラウンドでダウンを奪われたものの、第3ラウンドでダウンを取り返し、逆転TKO勝利を挙げて東日本新人王MVPに輝いた期待の選手。
全日本新人王の試合の方は、第3ラウンドまでは激しい打ち合いの連続であったものの、体力に勝る久保選手が、優勢に試合を進行させて迎えた第4ラウンド、チャンスにパンチをまとめ、2分29秒TKO勝利をあげました。それまで、気力でパンチを凌いでいた杉本選手は、ダメージの蓄積もあったのか、レフェリーストップの声を聞いて後ろ向きに倒れそうになりました。これを見た久保陣営宮田ジムのセコンドは、久保選手の祝福をするのではなく、杉本選手のもとに駆け寄り、リングで頭を打たないように、背中を支えました。杉本選手は、頭をリングに打ちつけることによる重篤なダメージを受けずに済みました。
スポーツの指導者は、広い視野から、自チーム相手チームを問わず安全確保を第一にはかるべき立場ではありますが、勝負へのこだわりもあり、現実にそれを実行するのは容易ではありません。一歩間違えば、命に係わる危険なスポーツでありながら、1対1の格闘技であるボクシングではなおさらです。
超私的な2020年度の全日本新人王決定戦MVPは、この宮田ジムのトレーナーさんです。