企業再建の第一人者、村松謙一弁護士の自伝的エッセー集。
若手弁護士には「志」と「情熱」を、金融マンには「情」を、経営者には「勇気」と「希望」を贈るべく、自ら携わった10件の例を挙げつつたたみかける、熱い作品です。
倒産に瀕した企業に対し、①まず預金相殺と滞納処分による資金ショートを防止しつつ、②財務と経営についての正確な調査によって、③倒産原因を把握し、④再建方針を確定し、⑤資金繰りに配慮しつつ、⑥債権者の同意を取り付けて再建計画を確定するという処理手順がわかりやすく説明されています。もっとも、これらを円滑に完遂することは実際には容易ではありません。
再生事件でいつも問題となる、①経営者による偏頗弁済および財産隠匿の回避と粉飾の是正の要請、②金融債権者以外の取引債権者の取扱、③債務免除益課税対策についても悩みが書かれていて、共感できました。
専門的な説明も多いのですが、難しいところを飛ばして読めば、法律に詳しくない方でも熱いメッセージを十分に楽しめると思います。